お孫さんができた皆様に向けて、現在と昔の育児知識の変化についてお話します。

私は、30代の男で二児の父であり小児科専門医としてある総合病院に勤務しており、インターネット上では「パパ小児科医」として、育児情報を発信しています。


かつて白血病は不治の病といわれていました。
しかし現在はいいお薬ができて「最も治療が可能である悪性腫瘍の一つ」となっています。
それと同様に子育ての知識も、色んな研究がなされる中で、根拠の乏しいものは修正されてどんどん新しいものが出てきています
そんな中、皆様の世代(赤ちゃんから見た祖父母世代)と、我々現役の世代(赤ちゃんからみた父母世代)の間には知識のズレが生まれそれは時としてストレスや争いのタネになることがあります。

祖父母世代も、現役の世代も、赤ちゃんにより良いことをしたいという気持ちはあるのに知識の違いによってストレスを感じることは悲しいことです。
今回はそのズレを解消して、赤ちゃんにとってより良い育児となるよう、医学的立場から新しい知識を紹介させていただきます。

  1. 6ヶ月未満の乳児に果汁を与えなくてもよい。
    昔は2-3か月になったら、果汁を与えることが一般的でした。
    しかし最近になって、栄養学的にメリットがなく、果汁を飲むことで母乳を飲む量が減るなどのデメリットが生じるため、果汁は推奨されなくなっています。
  2. 白湯を与えたほうがよい?
    これも同じように、白湯を飲むことで母乳やミルクを飲む量が減少してしまう可能性があり、白湯を飲ませることは推奨されていませんし、せいぜい50ml以内にとどめるようになっています。
  3. 食器の共有はさけるべき
    感染症の視点から、食器の共有はさけるべきです。また大人が噛み砕いたものを与えるのも、さけるべきです。とくに虫歯の原因となるミュータンス菌は食べ物や食器の共有によって大人から感染します。
  4. チャイルドシート、嫌がったら抱っこでもいい?
    6歳未満のお子さんにチャイルドシートは法律で義務づけられています。
    違反すると1点減点です。そして、抱っこでは事故したときに投げ出されてしまいますので、お孫さんは死にます。
  5. 抱き癖がつくので抱っこしすぎないほうがよい?
    「抱き癖」は医学的に否定されています。
    たくさん抱っこしてあげることが一番お孫さんにとって良いと考えられます。
    たくさん抱っこしてもらい、落ち着くと赤ちゃんは、いつしか抱っこしなくても大丈夫になります。

  6. あせもには天花粉を使うとよい?
    天花粉は吸水性がありあせもの対策とはなりえますが、必須ではありません。
    粉を吸引して咳や鼻汁の症状が出る事もあり注意が必要です。あせもの対策としては、汗を流すことや、温度を調節することや、皮膚炎を防ぐためのローションなどがあり、今はそういった対策が主流となってきています。

  7. できるだけ日光浴させたほうがよい?
    気象庁の発表では、紫外線の量は年々強まる傾向にあります。紫外線をあびすぎると皮膚炎を起こすこと、そして将来的に皮膚ガンの原因となりますので、過剰な日光浴は避けて、長時間の外出時には日焼け止めは必須となります。
    日光をあびないことで、ビタミンD欠乏となり、骨がもろくなることが懸念されますが、日光をあびるのは短時間で十分です。

  8. 赤ちゃんは体が弱いから厚着させる?
    現在はエアコンなど温度調節できるものがそろってますので、厚着しなくてもよくなってきています。病院には、厚着によってあせもができているお子さんがたくさん来ており、どちらかというと着させすぎの傾向にあると感じています。

  9. アレルギーになるからどんどんいろんなものを食べさせたほうがよい?
    食物アレルギーは年々増えてきていて、食物の誤食によるアレルギー症状、アナフィラキシーによる死亡事故もあります。
    医師から除去を指導されている食材についてはとくに注意が必要ですし、
    初めて食べる食材については、少量から少しづつが基本となります。
    安易に与えることで、思わぬ不幸を招く可能性があります。


  10. 早く歩けるようにするため歩行器を使用したほうがよい?
    歩行器で早く歩けるようになるという医学的根拠はありません。あくまでおもちゃと考えていただくほうがよいかと思います。

色々と書いてきましたが、いかがだったでしょうか?
昔と違う点に驚かれ、がっかりされたかもしれません。
しかし、この記事は皆さんの世代の子育てを否定するものでは全くありません。
皆様はその時代によしとされていることを、私たちにしてくださいました。
現在のように便利な育児グッズなどもなく、いろいろと苦労してその中でよいものを選んで私たちを育ててくださりそのおかげで我々はいま子どもを持ち育てることができていると思います。

私たちも皆さまがそうしてくださったように、いまのこの時代で最もよいとされる育児方法で、子どもを育てたいと思っています。育児の知識は時代とともに変化していますが一方で、子どもを思う親の気持ちというのはいつの時代も変わらないものです

私たちはいま、皆様の世代がいろいろと悩みながら育ててくださったのだということを身をもって体験しています。そこに尊敬の念を感じるとともに、たくさんの愛情を注いでくださったことに大きな幸せを感じています。泣き止まない子に自信を失ったり、高熱が出て不安な夜を過ごしたり、私たちが育児においてあれこれと心配し悩んでいることはほんの20-30年前に皆様も経験されたのではないでしょうか。
私たちは、皆様がどのように悩みながら子育てをし、どんな気持ちで乗り越えてきたのかということをもっと知りたいです。それはきっと、同じ悩みを経験している私たちを勇気づけるものになり、いかに自分が愛情深く育てられたのかを知ることができるのではないかと思います。育児に思い悩んだあの日のこと、今では笑い話となった失敗談、私たちは、そんなお話を聞いてみたいと思っています。

そしていつの日か自分の子供が「親」になったときにはいま経験しているこの苦労や失敗を話して深い愛情でもってあなたを育てたんだよ、ということを伝えたいと思います。


皆様が私たちに、そうしてくださったように。

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